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財産分与の対象となるか
不動産を相続した場合、結婚前に購入して結婚前に代金の支払いが完了した場合は、それぞれ相続した人、代金を支払った人のものですから、財産分与の対象になりません。
結婚後に購入した場合、結婚前に購入したが結婚後もローンを支払っている場合などでは財産分与の対象になります。
不動産がどちらか一方の名義であろうと、それぞれが2分の1ずつの権利を持つことになります。
ローンで購入した場合
(1)ローンが残っていない場合
ローンが残っていない場合は、単純に、2分の1ずつの持分に分けることになります。
もともと2分の1ずつの名義でしたら何もしなくて良いですが、どちらか一方の名義の場合は、離婚の際、他の一方に2分の1を、どちらか一方の持分が多い場合は、多い方から少ない方に2分の1になるまで財産分与することになります。
通常、夫婦が離婚したとき、一方が相手方に財産を渡したとしても贈与税はかかりません。相手方から贈与を受けたのではなく、夫婦の財産関係の清算や離婚後の生活保障のための財産分与請求権に基づき給付を受けたものと考えられるからです。
ただ、この財産分与が土地や建物などで行われたときは、分与した時の土地や建物などの時価が譲渡所得の収入金額となって、分与した人に譲渡所得の課税の可能性がありますから注意が必要です。
分与を受けた人には税金はかかりませんが、将来、分与を受けた不動産を売却するときには、財産分与を受けた日を基準に長期譲渡か短期譲渡として譲渡所得税がかかります。
(2)ローンが残っている場合
- 残っているローンの金額を確認して下さい。
(返済表がないときは金融機関に問いあわせて下さい) - 現在の不動産の価格を確認して下さい。
(多くの不動産会社が無料査定してくれます) - 不動産の価格がローンの残額より大きい(アンダーローン)か、住宅ローンの残額が不動産の価格より大きい(オーバーローン)かを確認して下さい。
- 債務者・保証人は誰かを確認して下さい。
以上を前提に、不動産を自分のものにしたいかどうかを検討して下さい。
(3)ローンが残っていても、ローンが不動産の価値より少ない場合(アンダーローンの場合)
不動産がどちらか一方の名義であろうと、それぞれが2分の1ずつの権利を持っています。
その不動産を欲しい人は、通常、相手方に、不動産の価格とローンの残額との差額の2分の1の額を相手方に支払うことで取得することが多いです。
ただ、不動産をもらわない人が保証人になっている場合、保証人を変更することはなかなか困難です。ですから、万が一、不動産を取得した人がローンの返済を怠ると保証人の責任を問われる可能性があります。
もっとも、アンダーローンの場合は、不動産を売却すれば負債がなくなる可能性が高いですから、保証人の責任を問われる可能性もそれほど高くないでしょう。
どちらも不動産はいらないとのことでしたら、売却して売却代金から必要経費を除いた残金を折半するのが良いでしょう。
(4)ローンが不動産の価値を上回る場合(オーバーローンの場合)
不動産を売却して、残ったローンをそれぞれが半額負担するということも考えられます(負債は財産分与の対象にならないというのが法的な考え方ですので、これは、法的な処理ではなく公平の観点からの事実上の処理です)。
どちらか一方が欲しいときは、欲しい人が不動産を取得し、かつ、ローンも負担するのが通常です。
ただ、不動産の名義は変更できますが、不動産を欲しくない人が保証人になっている場合は、やっかいです。一般的に、金融機関は保証人を変更してくれないからです。
従って、もしも、保証人の責任として返済することになった場合は求償できるという約束をしておくことになりますが、それでも、回収できないかもしれないという不利益があることは覚悟しておく必要があります。
また、子どもさんがいる場合などは、妻が不動産を取得するが、夫がローンを支払うと約束する場合もあるでしょう。ただ、このときも、夫がローンを支払わない場合、妻は返済を迫られますし、あるいは競売で立ち退きを迫られる可能性がありますので、そのような不利益を覚悟しておく必要があります。