離婚に関するお金の知識

お金が問題となる事柄

離婚に関して、お金が問題となるのは、次の5つです。

  1. 財産分与
  2. 慰謝料
  3. 婚姻費用
  4. 養育費
  5. 年金

財産分与

(1)財産分与とは

婚姻生活中に夫婦で協力して築き上げた財産を、離婚の際にそれぞれの貢献度に応じて分配することをいいます(民法768条1項)。

(2)財産分与の種類

清算的財産分与(夫婦が婚姻中に形成した財産の清算)、扶養的財産分与(離婚により生活に困る他方の生活の保障)、慰謝料的財産分与があると言われますが、清算的財産分与がほとんどです。この場合、たとえ、離婚原因を作った有責配偶者であっても請求できます。

(3)財産分与の対象

すべての夫婦の財産を分けると思っておられる方もいますが、そうではありません。婚姻中に二人で形成した財産を分けるのです。

従って、下記のものは財産分与の対象にはなりません

  • 結婚前に貯めた現金・預貯金
  • 結婚前から個人で所有していた動産・不動産
  • 結婚前に親からもらった家財道具
  • 結婚前あるいは結婚後に相続した財産
  • 結婚前あるいは結婚後に個人的に贈与された財産

逆に、婚姻中に二人で形成した財産であれば、その名義が一方の配偶者の単独名義でも分けることになります。下記のものは財産分与の対象になります。

  • 夫婦の片方の名義になっている預貯金や車、有価証券、保険(解約返戻金)
  • 退職金

(4)財産分与の割合

貢献度の割合に応じて、それぞれの持分が決まります。前は、夫6割、妻4割などの割合もありましたが、現在は、5:5の割合で分けるのが通常です

但し、一方の特殊な才能や技術(プロスポーツ選手や医師など)によって築いた財産が多いと、その特殊な技術がある者の割合が高くなることもあります。

(5)財産分与の方法

まずは話し合いですが、話し合いでまとまらないときは調停を申し立てます。通常、離婚調停を申し立てれば、その中で話し合うことになります。

離婚の時に財産分与しなかったとしても、離婚の時から2年以内でしたら家庭裁判所に調停又は審判の申立てをして財産分与を求めることができます(民法768条2項但書)。

話し合いがまとまらず調停が不成立になった場合には自動的に審判手続が開始され、裁判官が必要な審理を行った上、一切の事情を考慮して判断することになります。

もっとも、離婚が成立しないと財産分与も判断できませんので、離婚調停で財産分与について話し合っていた場合で、離婚が成立しなかったときは、その後の離婚訴訟の中で財産分与を請求することになります。

(6)マイナスの財産(債務)について

①財産分与の対象となる負債

すべての負債ではなく、夫婦の共同生活のために負った負債は財産分与の対象になります。例としては、次のようなものです。

  • 生活費のため借り入れた借金
  • 家族で使うために買った車のローン
  • 住宅のローン

②財産分与の対象とならない負債

夫婦の一方が自分のために借り入れた借金やギャンブルのための借金は財産分与の対象にはなりません。

③清算の方法

プラスの財産とマイナスの財産を合計して、プラスがあれば、そのブラス分を分けることになります。

プラスの財産とマイナスの財産を合計して、マイナスの場合は、そのマイナス分を分けることになります。

住宅ローンの場合は、いろいろな方法が考えられます。「離婚の際の不動産処理」のページを参照下さい。

④審判の場合

以上は、話し合いや調停での考え方です。財産分与の審判(家庭裁判所での裁判)になると、少し事情が違います。

プラスの財産とマイナスの財産を合計して、プラスがあれば、そのブラス分を分けることになることは一緒ですが、プラスの財産とマイナスの財産を合計して、マイナスになる場合は違ってきます。裁判所は、マイナスになる場合は財産分与する財産がないと考え、マイナス分については判断しません。従って、マイナス分は債務名義のある人が負担することになります。

債務については、特段の事情がない限り平等に負担すべきとした判例(東京地裁平成11年9月3日)、債務の負担割合を定めた審判(大阪家裁平成17年6月28日)もありますが、債権者との関係など複雑な問題があるので、裁判所は判断しないというのが体勢です。

これが公平かどうかは問題がありますが、財産がマイナスになる場合は、調停で解決すべきでしょう。

慰謝料

離婚するとき、いつでも慰謝料を請求できるわけではありません。「突然、一方的に離婚を迫られた。慰謝料を請求できますか。」と質問されることがありますが、原則、相手方に不貞行為や暴力行為などがなければ慰謝料は請求できません。

この場合は、そもそも離婚に応じなければいいのです。もっとも、相手方に離婚の要望が強いときは、慰謝料ではなく解決金の名目で要求することが可能です。

慰謝料の額については、基準を定めた法律はありません。裁判になった場合は、裁判官が、これまでの裁判例を参照に額を決めることになります。一般的には、100万円から300万円の間が多いです。

この慰謝料は離婚の成立から3年で時効になりますのでご注意下さい。

婚姻費用

  1. 婚姻費用とは、別居中の夫婦の間で、夫婦や未成熟子の生活費などの婚姻生活を維持するために必要な一切の費用を言い、日常の生活費、衣食住の費用、医療費、交際費等の他、子供の養育費が含まれます。
  2. まずは、当事者間の話し合いで決めますが、まとまらない場合や話し合いができない場合には家庭裁判所にこれを定める調停又は審判の申立てをすることになります。
  3. 相手方が婚姻費用を支払ってくれない場合は、直ちに、調停を申し立てて下さい。婚姻費用分担請求は「請求したとき」から認められるというのが現在の裁判所の一般的な考え方ですから、過去にもらえるはずだった婚姻費用を後になってから請求するのは難しいからです。
  4. 婚姻関係が破綻あるいは別居に至った原因が、主に婚姻費用を請求する側にあるような場合には、「権利の濫用」として、その一部又は全部が認められない場合もあります。
  5. 婚姻費用の額は、養育費と同じように「養育費・婚姻費用算定表」に基づいて計算されます。

もっとも、この表は、一定の条件の下に作成されていますので、例えば、子供が私立学校に通う場合、子供が4人いる場合などは「養育費・婚姻費用算定表」では計算できませんので専門家にご相談下さい。

養育費

養育費は未成熟の子供が自立するまでに要するすべての費用をいいます。これには、衣食住に必要な経費、教育費、医療費、娯楽費、交通費等が含まれます。

養育費の金額は生活保護基準方式に基づき算出されます。現在、一定の条件の下、「養育費・婚姻費用算定表」が作成されていますので、これを見れば算出できます。

ただ、子供が私立学校に通う場合、子供が4人いる場合、再婚して、再婚者との間に子供が生まれた場合などは、「養育費・婚姻費用算定表」では計算できませんので、専門家にご相談下さい。

なお、養育費については、「養育費の請求について」をご参照下さい。

年金

(1)年金対象者の呼び方

まず、次の呼び方を知っておいて下さい。

  1. 第1号被保険者 自営業者、学生、無職の方などが加入する国民年金だけの加入者
  2. 第2号被保険者 サラリーマン・OL・公務員など厚生年金・共済年金の加入者
  3. 第3号被保険者 サラリーマンや公務員の妻など第2号被保険者の被扶養配偶者

(2)年金分割とは。

年金分割制度は、離婚後に、片方の配偶者の年金保険料の納付実績の一部を分割して、それを、もう片方の配偶者が受け取れるという制度です。

この制度は平成16年に導入されました(国民年金法の一部を改正する法律)。

分割できるのは、「厚生年金保険および共済年金の部分」に限りますので、国民の基礎年金である「国民年金」に相当する部分や,「厚生年金基金・国民年金基金」等に相当する部分は分割の対象にはなりません。従って、夫が自営業者や自由業、農業従事者等の場合には年金分割はできません。

また、「婚姻期間中の保険料納付実績」を分割する制度ですので、「婚姻前の期間」の分は反映されませんし、将来受け取る予定の年金金額の2分の1をもらえるわけではありません。

(3)年金分割の種類

  1. 年金分割の種類
    年金分割には,合意分割と3号分割の2種類があります。
  2. 合意分割 婚姻期間中の年金を分割する制度です。
  3. 3号分割 平成20年4月1日以後の3号被保険者期間における年金を2分の1ずつ分割する制度です。

(4)年金分割の方法

  1. まず、話し合って合意分割をして下さい。
  2. 当事者間の話し合いがまとまらない場合や話し合いができない場合には,家家庭裁判所に対して按(あん)分割合を定める審判又は調停の申立てをして下さい。ただし、離婚した日の翌日から起算して2年を経過した場合には、この申立てをすることはできませんのでご注意下さい。調停でまとまらないときは、裁判所が判断することになります。
  3. 3号分割は、一人で請求ができて便利な制度ですが、平成20年4月1日以後の婚姻期間分に応じた年金しか対象になりません。ですから、それ以前の分は、合意分割等する必要があります。
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